35周年記念企画 / マレビトの会公演について、中日新聞3月3日(月)号に紹介記事が掲載されました。

京都のマレビトの会
“声と人物との乖離”を
劇作・演出家、松田正隆が代表を務める京都の「マレビトの会」が二十九、三十の両日、名古屋・大須の七ツ寺共同スタジオで「パライゾノート」を上演する。数々の演劇賞に輝いた松田が作・演出し、「記憶そのものの像とそれを語るときのずれ」を「声」の演劇として提示する実験的な舞台になりそうだ。
男の背にはこぶがあり、そこから男の妻だったらしき者の声がする。女は赤ん坊を背負い、赤ん坊を売って病気の母の牛乳代にしようとしているが、売れるわけはなく、男の前に戻ってくる-。“怪優”ごまのはえ(ニットキャップシアター代表)と筒井加寿子を擁した二人芝居。場所なき場所たるパライゾ(天国)にいる二人を映画「惑星ソラリス」「少女ムシェット」のイメージを盛り込みつつ描く。
二〇〇四年に八年ぶりに演出を再開し、今回の作品は一昨年に京都で初演した。松田は同スタジオ初登場。演出をテーマに三集団が一月からリレー公演してきたスタジオ三十五周年企画の悼尾を飾る。
「演出家はクイズの出し手のように先に答えを持っているわけじゃない。演出家だって何ができるかわからぬまま作品に向かい合い、俳優との共同作業で一回ごとに新しい世界を作っていく」。松田を招請したスタジオ代表の二村利之は「演出家が役者にああしろ、こうしろと言えば安全な舞台ができるが、根源的な問い直しをする松田さんの演出はそうはならない。シリーズを締めてもらうのは松田さんしかいないと思った」と話す。
舞台の俳優が無前提に対象人物になりきり、自らの声のように発語することに松田は欺まんすら感じてきた。今作で声と人物との乖離を主題に選んだ理由はそこにある。「男女にさまざまな声や言葉が飛来、憑依する構成にしたかった」。吹き込み音声を演技にシンクロさせるなど、演劇における発語とは何かを問う実験といえるだろう。ごまのはえは「二人は誰、ここはどこ、次々と分からなくなるところをハラハラドキドキ見てほしい」と話す。
マレビトは「ある共同体がなえ、機能不全に陥ったときに現れる異人」の意という。民俗学者・折口信夫にならって命名した。
開演は二十九日午後七時、三十日午後二時の計二回公演。3500円。
